第72回女性鍼灸師フォーラム学習会「逆子の妊婦の鍼灸治療」参加者から、講師の辻内敬子先生へ質問がありました。講師の意見と回答です。
Q:妊婦さんへの逆子の鍼灸治療について、事前の説明と同意が必要とのことでしたが、この「同意」は口頭でのものでも問題ないでしょうか。それとも書面での同意が望ましいのでしょうか。
A:妊婦さんへの同意は、カルテに同意欄を設けるとよいと思います。医師や助産師さんには口頭で尋ねてもらい、来院報告書の提出を心掛けるとよいと思います。「逆子の妊婦の鍼灸治療」第72回学習会の配付資料に載せてあります。
② 逆子の治療に対して期待の大きい患者さんはとても多いと感じています。治療の前にご説明はするのですが、逆子が治らなかった場合に非常に落ち込まれる患者さんもいらっしゃいます。こういった場合、どのような声かけをされていますか?意識していることなどがあれば教えていただきたいです。
A:鍼灸師として、最大の努力はすることをお伝えしながらも、逆子は、胎児と母体など、様々なことが関係するので、逆子はすべてが治るわけではないことを説明します。また、来院時の週数や分娩歴などを用いて、過去の報告の矯正率をお話ししています。逆子治療を利用してくださる妊婦さんが、無事に出産することを喜べるように、気持ちが転換するのを支援するのも、役目だと思って関わらせてもらっています。
③ 臍帯巻絡のある方に対する施術について、病院の医師が「施術しても大丈夫」と言われた場合、鍼灸師として逆子の施術を行っても問題ないと考えてよいのでしょうか。以前、へその緒が2回巻いていた妊婦さんがいらっしゃったことがあり、対応に迷った経験があります。
A:胎児が自分で苦しくするようなことはないと思っていますが、動いているうちに臍帯が巻き付いてしまったんでしょうね。医師からの大丈夫と、妊婦さんの同意があれば、試してみましょう、ということは可能だと思います。
④ 胎児の向きが、顔をお母さんの背中で、赤ちゃんの背中がお母さんのおへそのほうを向いている場合は、どちらの側臥位から施術を始めるといいのでしょうか。
A:難しいですね。その時は、どちらか、お母さんが苦しくない姿勢から始めてはいかがでしょうか。そして、治療後には、胎児が動いた姿勢や妊婦さんの状態で横向きを選択してはどうでしょうか
⑤ 逆子の対策として、産科医から寝る向きを胎児の背中が上にくるようにという指導がされることがあると思うのですが、これに有効性はあるのでしょうか。
A:逆子体操よりも実際的なのだと思います。有効性についての報告は探せていません。
⑥逆子治療を受けていて逆子は返ってそのまま出産まで高血圧もあったので治療を続けていたのですが下がらず、結局妊娠高血圧症候群の診断がつきました。この場合は鍼灸を継続治療するべきだったのか、やめるべきだったのか未だに考えてしまっています。
A:妊娠高血圧症で急激な変化が起きてしまう時がありますから、それに気を付けるように、血圧計を準備していき、毎回の計測が大切です。治療を続けていらっしゃった時に、血圧が高くなかった状態なら、それは問題がないと思います。体調を整えるのに役立っていたけれど、血圧の安定には効果が無かったのだと思います。胎児の成長や妊婦さんの血圧が心配になってくると安静の指示が出てきますので、続けていても問題がなかったのではないかと思います。